ジェイクールのスタッフ雑記

NHK杯『橋本崇載 八段vs郷田真隆 NHK杯』ハッシーの棋士人生を懸けた戦いがここに!

第64回NHK杯テレビ将棋トーナメント。
本日の対局は『橋本崇載 八段vs郷田真隆 NHK杯』。
NHK杯選手権者である郷田さんの今期初登場もありますが、やはり注目はハッシーでしょう。

解説は佐藤康光九段。今日も1億と3手読んでもらいましょう。
この夏は棋士会の会長として、震災被災地での将棋イベントにも参加していたそうです。

さて、まずはハッシーの対局前のインタビューVTRですよね。
最近の調子を聞かれると「はい、えー。おはようございます、橋本です」
何やらハキハキした受け答えで始まりました。でも、体は左右にユラユラ。

全文書くとやや長いので、要約で書くと
「この夏は楽しく過ごせたけど、将棋が勉強不足になり、どうも申し訳ありませんでした」
「勉強不足、の分、あ・り・余る才能でカバーします」と溜めを入れた面白い言い回し。

本局の抱負には「かなり気合入ってます。何としても勝ちたいです」
「棋士人生の全てを懸けて戦います」とかなり強い意志表示。

「なので、応援して下さい。よろしくお願いします」
何だか始まりからここまで見ると選挙演説みたいですね。

「てゆーか、あの。相手を応援しないでくださいね」
最後はドラマ『HERO』の木村君ちっくな締めで。
わざわざ、この一言を加えたのには、少し意味深に感じるところもありますが、それはそれで。

全体を通してのボケっぱしという形では無かったですけど、
これはこれで楽しくて良かったですね。
勝ち残ればまたVTRが見れるだけにハッシーを応援したくなります。

郷田さんは既に対局に向けて集中している様子で、
インタビューには無難に受け答えしていました。

対局はハッシーの先手で、少し時間を使ってから初手5六歩。
ハッシーは居飛車、振り飛車、どちらも指すので、飛車を振るかも注目でしたが、
本局は振り飛車が見れそうですね。

8四歩、7六歩、8五歩、7七角、5四歩、8八飛。
中飛車の可能性もありましたが、本局は向かい飛車に。
ここからお互いに美濃囲いへ。

郷田さんはここで目を瞑って考えています。鼻の調子が悪いようで、たびたび音がマイクに。
駒台に手を被せてしまう癖を言われた件があったせいか、今日は座布団の後ろ目に座っていますね。

後手も3三角と上がって美濃囲いにする形は、その一手が手損になる可能性もあるだけに、
あまり見ない形だそうです。ここから互い高美濃にして、先手は3七桂の攻撃的な形へ。

ハッシーは例年通り着物で対局。これは祖母が華道の先生で、プレゼントしてくれるそうです。
いつもながら、とても似合っていて良い感じ。
真っ黒な扇子を使っているのも個性的ですよね。これは意味があるのかないのか。

2四歩、2六歩と続き、銀冠に組み替える形も見えましたが、
後手から7四歩に6六銀、6四歩。

佐藤さんは「6四歩のところでは6四銀が普通で、そうなればもう少し駒組みが続いたけど、
この形は先手が動くでしょう」と。清水さんがいつも通り解説者攻めをする場面も。

時間を使った先手は、佐藤さんが本命で上げていた5五歩と突き開戦。
7三桂、5八飛。互いに歩をとらない形で進めます。

ここで清水さんが「佐藤さんは史上3人しかいないNHK杯連覇者で」と話を振るも、
「いえいえ、その後、羽生さんが~」と。羽生さんは4連覇しましたからねえ。
連覇でも十分凄いのに、そこは佐藤さんの人柄。謙虚で真摯で天然なところもあって魅力的です。

後手は少し読みを入れて8六歩。カンナさんが読み間違えましたけど、平常運転なので気にしない。
これには同歩と見られていた中、先手の選択は同角。
続いて6五歩に対しては5七銀。引きましたかあ。

後手は先手の飛車先が止まった所で、5五歩と取りました。
先手は7筋から桂頭を狙う指し方もありましたが、実戦は4五歩。
これに対しては取った位を支える5四銀。

佐藤さんは「桂馬を跳ねている分、先手の方が守りが薄いので、神経を使う展開に」と解説。
4四歩、同角、4五歩打、3三角、4六銀。先手は4筋の位を確保します。
玉に近い分、この位があるのは大きいですね。

後手は角道を通す5六歩。
放っておけば次に香を取る9九角成があり、7七角と引くのは8七飛成。
受けが難しそうに見えます。

先手の指し手は、角が出る6四角。駒音が高かったですね。
この7三の桂取りに当てた手が好手だったようで「まさに才能溢れた一着でしたね」と。
この切り返しは痺れますねえ。ハッシー魅せます。

後手は前述の角成、飛車成が両方あった中、それでは厳しいと見て8三飛と受けました。
指し手は元気なく「仕方なく」と言った印象。
5五歩打、6三銀、8六角として、先手が5筋の位を奪還します。

佐藤さんが「後手はここで勝負したいところ」と言っていた中、4二角と角をぶつけて勝負に。
5六飛、8六角、同歩。角交換から後手は6九角打と、すぐに打ち込みます。
解説では「捻り出した手」と言われていました。

この手にハッシーは、体を起こしながら両手で鼻と口を押さえるような形で考えていて、
次第に両手が下がってくると、手を合わせて祈っているような格好に。
絵的にはちょっと面白かったですね。

その祈りからの一手は7七角打。この手も駒音高く。
飛車が出る手を受けつつ、角道には後手玉があります。
6六歩、同飛。ここで後手は4七角成と角を切って金を入手。

同銀、6五金打。これで先手の飛車が詰んでおり、玉型を薄くした分、上手くやっているように。
先手は角道を開ける5四歩。後手は5五歩打とすぐに止めます。
6五飛、同桂、5五角。この受けの悩ましい王手には3三桂を選択。

4四歩、4二金の交換が入り、5三歩成、同金。
先手の4四歩は「強気な手」と佐藤さん。

その佐藤さんは、ここで桂頭を攻める3五歩を挙げていましたが、
それでは遅いと見たか、実戦は4五桂。5四銀、3三桂成、同銀。
「桂馬で桂馬を取る形にはしたくなかった」と言っていた佐藤さんは「どうなんでしょう」の一言。

4五桂打のおかわりには、2一桂打と対抗。3三桂成、同桂。
先手は6一角打とします。飛車取りと3四角成の狙い。
後者を厳しいと見た後手は、5二歩打。

ここでハッシーは最後の1分を投入して、8三角成と飛車を入手。
馬自体は利きが弱く、飛車と交換になったように見えます。
後手の5五銀には「ここで攻める手も」と言われていましたが、受けに回る同銀。

郷田さんもここで最後の1分を投入して勝負。
4五桂打、4六銀引、5七桂右成。先手は、どう受けるのが良いのか悩ましいとこです。

その先手の選択は7四馬。この受けは見えていなくて、感触の良い手でしたねえ。
郷田さんもこの手を見て首を横に振っておりました。

8八飛打、5八歩打、8九飛成。ここで先手は6五馬とし、今度は馬を攻めに使います。
角道が2一まで通っているので、このままでは厳しいですね。
という事で、後手は歩が使えない5筋に5四桂打の非常手段。

この局面では「一気に寄せに行く手もあるのかな」と言われていた中、
ハッシーは迷った手つきで4五銀。そこに8二角打。遠見の角で王手に。

この手を見て、ハッシーは両手で頭を抱えます。
5五桂と受けた手に、金を取る4九竜。また頭を抱えています。

おそらく寄せが読みきれていないのでしょう。
それでも勝負の2三銀打をここで決断。

文字通り、詰むや詰まざるや。

佐藤さんは「何とか詰んでる感じがする」と言っています。
同玉に3四銀と指した手では、落ち着きを取り戻していて、駒音も高く。
最後は6四の馬で5三の桂を取る手順が気持ち良く、117手で橋本八段の勝利となりました。

本局は本格派同士らしい応酬、捻り合いとなり、見応え十分の面白い将棋でしたねえ。
郷田さんの攻めも上手く見える場面が幾度かありましたが、
ハッシーの6四角、7四馬などの切り返しが更に上を行った印象です。

VTRに将棋の内容も面白く、普通に良い放送回でしたね~。
佐藤さんの解説もいつもながら的確で分かりやすかったです。

これで今期はハッシーのVTRが、もう一回見れることに。
過度に期待しないで、今回ぐらいで楽しみにしておきましょう。

来週の対局は『森内俊之 竜王vs木村一基 八段』。
受けの強さが光るお二人の対戦です。解説は深浦康市九段。
深浦さんと清水さんのトークも何気に面白そうな気がするので、こちらも楽しみに。

【先週のNHK杯】
NHK杯『飯塚祐紀 七段vs西川和宏 五段』重厚vs粘りの対決は相穴熊となり
【翌週のNHK杯】
NHK杯『木村一基 八段vs森内俊之 竜王』木村将棋全開!受け師の本領発揮も勝負の一手を踏み込めず
【橋本八段の3回戦】
NHK杯『橋本崇載 八段vs畠山鎮 七段』序盤から終盤へ。読み比べを制したのは
【人気のNHK杯の記事】
NHK杯『渡辺明 二冠vs佐々木勇気 五段』超激戦!二転三転のドラマは名局賞級!
【電王戦タッグマッチどうなのって記事】
『電王戦タッグマッチ2014 Bブロック』鳴り響いたティロティロ。渡辺解説が贅沢にも3局!
【記事一覧】
将棋記事多めのジェイクールのスタッフ雑記一覧はこちら

contact-blog-staff
renew-link