ジェイクールのスタッフ雑記

第64回NHK杯『三浦弘行 九段vs豊島将之 七段』大器の片鱗を見せた9六歩

【2015年NHK杯の同一カードの記事はこちら】

第64回NHK杯テレビ将棋トーナメント。
本日の対局は『三浦弘行 九段vs豊島将之 七段』。
豊島君の攻め将棋に対して、三浦さんがどんな作戦を用意しているか注目です。

解説は木村一基八段。皆大好き木村さんの解説です。
本放送の収録は王位戦の決着前だったようで、清水さんがその話題に。
「現況はまあまあ」「寝不足で口数が少なくなるかも」と。後者は冗談でしょう。

木村さんは三浦さんの印象を「序盤、中盤、終盤、隙が無いですね」と、早速遊んでます。
対する豊島君の印象も「序盤、中盤、終盤、隙が無いですね」と、ネタの継続手。
豊島君は序盤が意欲的共言っていて、これには同感です。

三浦さんは対局前のインタビューで「豊島君にはだいぶ酷い目にあっているので」と言っていて、
これを見た木村さんは「三浦さんから気合を感じます」と。
豊島君のインタビューには「受け答えも隙が無い」「いじるところがない」と軽く流しました。

先手は三浦九段。今日は眼鏡姿ですね。いつから眼鏡っ子になったのでしょうか。
7六歩、3四歩、2六歩、8四歩、2五歩、8五歩。
これは横歩取りに進みそうです。

7八金、3二金、2四歩、同歩、同飛、8六歩。
同歩、同飛、1六歩、7六飛、7七角、7四飛。
先手は横歩を取らずに1六歩としたのが工夫ですね。

この端を得に出来るか否かの攻防になりそうです。
すぐに何かある訳ではない現局面だと、先後が逆になったような状態で、
三浦さんはこの形でやれると見ているのでしょう。

2六飛、8四飛、8八銀、2三歩、5八玉、6二銀。
3八銀、7二金、9六歩、5二玉、8七銀、7七角成。
互いに玉は中住まい。先手の8七銀を見て、後手はここで角交換を選択。

大盤では対戦成績の話をしています。
三浦九段の0勝、豊島七段の5勝。三浦さんが気合を入れるのも分かります。
A級在籍が長いですし、豊島君が勇者的ポジションだとしても、意地を見せたい所でしょう。

同桂、3三桂、9五歩、1四歩、8六歩打、5四飛。
先手は9筋を詰めました。対する後手は5筋に飛車が回り、玉頭攻めを見せます。
先手の右銀が3八で、5七の地点に利いていない形を咎めようという狙い。

先手の8六歩は単に受けの手では無く、隙あらば8五歩と突いて仕掛けて行こうという、
「上目遣いのごめんなさい」と木村節の解説。

清水さんからは三浦さんの趣味の話。趣味は犬の散歩だそうです。
昔は「無い」と言っていて、木村さんが「チューリップを育てるとか言ってみたら」と
アドバイスしたそうですが、これは華麗にスルーされたようです。

木村さんは豊島を「最近は目を見ないで話す子が多い中、彼は目を見て話す」と言っていました。
「棋士の誰しもが、タイトルを取る棋士と評価している」とも。

三浦さんは胡坐で考えています。
4八金、7四歩、8五歩、3五歩、8四歩、8二歩打。
後手に8二歩打とさせたのは先手が上手くやっているように見えますね。

9四歩、同歩、9三歩打、3六歩、9四香、9六歩打。
先手の9三歩打では、上手くポイントを上げた印象で、後手の受けが難しく見えます。
という事で、後手は受けずに3六歩と行きました。

これに9四香と走った手に、この手を逆用した9六歩打の垂らし。
相手の指し手によって生じた手だけに、予定では無かったと思いますが、
この閃きの一手が輝きを放っているように見えます。

読めば読むほど価値が上がる手。しびれる一手ですね。
木村さんの言うように三浦さんは「なんだこれは」という顔をしています。

8六角打、7五角打、同角、同歩、9二歩成、9七歩成。
先手の角打ちは駒音高く。角を合わされた手に「同角は絶対ない」と解説した木村さんは
同角を見て「早指しは忘れるのが大事」と自分をフォロー。可愛いですねえ。

同角、同歩は後手が得をしていそうなだけに、そこからの9二歩成の手順は、
「先手の指し手がチグハグに見える」と木村さん。

8六銀、9六角打、7九金、8七角成、8一と金、8六馬。
攻め合いは後手の攻めが早いように見えます。

6五桂、4五桂、6九金、8七馬、5九金、6五馬。
後手の4五桂は詰めろ。木村さんは「僕は攻めが苦手ですが、この手は詰めろです」と、
先日のNHK杯で勝ちを逃した事に対する自虐ネタを入れるのは、木村さんらしいです。

後手は詰めろから6五馬で桂馬を入手。これには後手がリードと解説。

3六飛、9四香。
香車を入手した後手は、次に5五香打ちの狙いがあり、これが厳しいようです。
木村さんはこの手の解説で「足し算は得意です」と何だか楽しそう。

三浦さんは攻防に見込み無しと判断したようで、ここで投了。
68手で豊島七段の勝ちとなりました。

TV対局だと分かりやすい形まで進めることが多いだけに、
三浦さんは余程指したくなかったのでしょう。
これで対戦成績は三浦さんの0-6ですし、かなりストレスに感じているのが感想戦でも。

終局時間は11時半。ということで、感想戦は初手から。三浦さんは眼鏡を外していました。
先後が逆のような横歩になったことで、木村さん、三浦さん、豊島君、
皆がたびたび符合を逆に言ってしまうことに。やはり形で覚えているんだなと思いますね。

先手が9三歩打と垂らしたところでは、豊島君も「後手が困っているのかな」と思っていたそうです。
その先手は、9四香が疑問手だったようで、9六歩が鋭い一手との結論でした。

最後に木村さんが「9四香ではなく、3六飛としていたらどうだったか」とフォローしたのですが、
三浦さんは「それはまた後手も違う手を指したでしょ」と、ややキレ気味に言って終了。

本局は三浦さんの工夫が上手く、じりじりと有利に進めていた中、
9四香、9六歩打の二手で状況が一転。そこからは後手が勝ち筋に入っていた印象です。
普通にありそうな9四香で、このような展開になるんですから恐るべし。

「豊島君が大器と言われる片鱗を見せ付けた」そんな一局だったのではないでしょうか。
豊島七段ここにあり。

来週の対局は『増田裕司 六段vs菅井竜也 五段』。
関西棋士同士の対戦となります。解説は船江恒平五段。
菅井君と船江君は兄弟弟子ですし、どちらも電王戦出場経験者だけに
そこら辺の話も聞けたら嬉しいですね。

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