ジェイクールのスタッフ雑記

将棋電王戦FINAL 第4局までの感想編

出来れば一局ずつ記事にしたかったのですが、時間の関係で4局分まとめて振り返る感想編。

【第一局】斎藤慎太郎五段 vs Apery
斎藤君の完勝という記事が多かったですが、夕食休憩前の長考など、
分岐点は幾つかあり、いずれも手数が伸びる変化になると、
ミス無く指し続ける難しさが出てくるだけに、紙一重を凌いで凌いでの完勝だった印象です。

Aperyは危惧していた粘りの変化をあまり選ばず、
少しずつ盤面が分かりやすくなっていったのも好材料でしたね。
とはいえ一手のミスが致命傷になりかねない勝負だけに、
タフに指しきった斎藤君の指し回しは本当に素晴らしかったと思います。

一つ残念だった点を挙げるなら、Aperyが序盤に指しすぎて形勢を損ない、
力がでない展開になってしまった点でしょうか。
まあ、出来不出来があるのは人間も一緒なので、今日はAperyの日ではなかったと言う事で。

盤外では現地で大盤解説をしていた村田顕弘五段が
予想外の一手に「りゅ、りゅ、りゅ、竜を取ったんですかぁ?」と
異常に動揺するという一幕があり、これには聞き手をしていた女流棋士陣も
笑いを堪えるのに精一杯という、とても面白いシーンがありました。

【第二局】永瀬拓矢六段 vs Selene
さてさて、衝撃の幕切れとなった第二局。
様々な選択肢があった中で、あの選択をした永瀬君が示したメッセージは何でしょうか。
自分には「人間をなめるなよ」という、何か怒りのようなものに感じましたね。

局後に様々な人達が盤面を検討して、続けていても永瀬君の勝勢だったという結論でしたが、
そこは何が起こるか分からないのが将棋だけに、
Seleneの反則負けという形になってしまったのは少し残念に思いました。

盤外では現地大盤解説で、佐々木勇気五段がぶっちゃけトークをしていて、
純粋な感じのする彼らしい忌憚のない内容でとても面白かったです。

テレビだったら、喋りの途中で突然CMが入って、
CM明けには彼の席にヌイグルミが置かれていた、なんてこともありそうなシーン。

【第三局】稲葉 陽七段 vs やねうら王
この対局のポイントは稲葉君が用意していた作戦で、
相手の飛車道を開けて飛び込ませ、閉じ込めるという、
通称『開門戦法』が成立するかどうかだったと思います。

やねうら王は作者の磯崎さんが局後の会見でも言っていましたが、
他のソフトと違って、ソフトの貸し出しによる狙い打ちを避けるための
プログラミングをあえて行っていないそうで、
「狙い打ちが出来る以上、プロ棋士が勝って当たり前」と考えてか、
負けた時の喋りしか用意していgなかったとも。

と言う訳で、手の再現率が一番高く、狙い撃ちしやすかったのが
おそらく、やねうら王だったのではないかと思います。
開門戦法でリードして勝つ。このシナリオの成功率は高かったのではないでしょうか。

しかし、実戦の盤上で開門戦法は再現せず。
結果は、やねうら王の圧勝となりました。
何故、こうなったのか。

これも局後の会見で磯崎さんが言っていましたが、
本番の環境では電王手さんが動作する時間があり、
どうやら、この時間がやねうら王の思考に影響したらしく、
神のいたずらとも言える、開門戦法を避ける一手に繋がったようです。

個人的には、この一手が分けたのは、この一局の命運だけではなく、
FINAL自体の命運も分けた一手になる可能性もあるのではないかと。
現実にならないことを期待しましょう。

盤外では、ニコファーレで解説をしていた糸谷竜王に
聞き手のアジアジが「好きなタイプの芸能人」を聞いたあとに、
続けて「好きなタイプの女流棋士」も聞くという、すごいぶっこみがありました(笑

FINALは毎回、対局者以上に攻めてる人が盤外に出てくるのが面白すぎですね。
糸谷君がドワンゴの人工知能研究部門の人と、えらい長々と話してたのも興味深い話でした。
糸谷君と稲葉君は犬猿の仲なようで、仲良く喧嘩しているエピソードも良かったです。

【第四局】村山慈明七段 vs ponanza
一ヶ月前からは、本局の相横歩一本に絞っていたという村山君でしたが、
3六飛と引かれる変化が想定外だったようで、
研究を外されてからは、完全に力負けの内容で、本人も言っていましたが完敗でした。

普通に指したら1、2割の勝率と言っていたのも衝撃的な内容だったように思えますね。
前局もそうでしたが、短期決戦でハメ手からリードを奪って逃げ切りを狙うというのは、
完全に弱者の戦略な訳で、これが現在のコンピュータの強さという事でしょう。

ponanzaに関しては、対人間では一番強いのではないかという声も多く、
自分も「少し違うレベルにいるのかな」という印象があります。

様々な関係性から、間違いなく実現しませんが、
いまのponanzaにタイトルホルダーが勝てるのか。
純粋に「観てみたいなあ」という気持ちです。

ソフトの進化が早いだけに、コンピュータと戦うという構図自体、
話に出なくなる日もそんなに遠くないのかな、という気もしています。

何だか話が重たくなってしまいましたが、
勝負は2勝2敗。団体戦の勝負の行方は最終戦に。クライマックスです。
大将の阿久津君は記者会見でプレッシャーをかけれらた際に、
露骨に嫌な顔をしていたのが、ちょっと面白かったですね。

何となく阿久津君は小細工せずに、ガチンコでぶつかりそうな気がするんですよねえ。
FINALは「捻り合い!」って感じの対局がここまで無いだけに、
最後は捻り合って、是非勝って欲しいですね。期待しときます。

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