ジェイクールのスタッフ雑記

第66回 NHK杯『船江恒平 五段 vs 近藤誠也 四段』終盤力炸裂なるか。新鋭の差し回し光る

第66回NHK杯テレビ将棋トーナメント。
本日の対局は『船江恒平 五段 vs 近藤誠也 四段』
今日から新シーズンが始まり、その開幕戦となります。

オープニングで8人ずつ表示される棋士の写真は、
前期のベスト16が表示されているのだと思いますが、
今期の出場者に名前が無い人がいるのは少し寂しいような。

また、村山NHK杯選手権者が最後に一手指すシーンも、
指す前にスタッフ側をチラ見してしまっているので、
テイク2をやった方が良いと思うんですけどねえ。1年使う訳で。

今期の司会・聞き手を務めるのは藤田綾女流初段。
棋譜読み上げも総替わりで、井道千尋女流初段、飯野愛女流1級の顔ぶれに。

って、藤田さん凄い緊張してますなあ。
冒頭の「こんにちは」が「コンニチハ」な感じ。

あの司会独特のスラスラした喋りは難しそうですよね。
最初なので、前任をなぞる形で始めたのだと思いますが、
自分に合った形でね。重要なのは内容を伝えることなので。

挨拶の後は今期の出場者の紹介がありました。
毎度、思いますが、ここの長回しは大変ですよねえ。
いつも「凄いなあ」と感心します。

好きな棋士と1回戦の気になるカードを書いてみると、
今期の女流枠で初出場となる加藤桃子女流二冠は、やはり楽しみですね。
Aブロックはそれぐらいかな。

Bブロックは、佐々木勇気五段が松尾歩八段と当たるのは要チェック。
前にNHK杯で記録係をやっていた黒沢怜生四段が出場者として参加するのは、
感慨深いものがありますね。どんな将棋を指すのか、こちらも楽しみに。

次に菅井竜也七段が、えらい山に入りました。おそらく最激戦区。
一回戦では糸谷哲郎八段と対戦。勝者は二回戦で渡辺明竜王と対戦。
逆山のシードは佐藤天彦八段となっており、見事な難敵揃いとなりました。

あとは一回戦だと戸辺誠六段と永瀬拓矢六段の対戦も好カードですね。
毎度ですが、初出場の棋士がどんな将棋を指すのかも楽しみです。

番組はカメラが対局場を映しています。船江君が先手のようですね。
後手の近藤四段は初めて見るので、どんな棋風、キャラクターなのか注目です。

解説は近藤四段の兄弟子ということで、初回から渡辺明竜王の登場です。
藤田さんは解説者と話を始めると、いつも通りと言った感じで、お馴染みの雰囲気に。

渡辺さんが両者の印象を語っていたところ、弟弟子の近藤君は年齢が一回り離れていて、
どうやらあまり詳しくないそうです。ちなみに近藤君は19歳。

去年の秋にプロになったばかりというのもあり、
10局程度の対局データから居飛車党らしいと話していました。

対局前インタビューは先手の船江君から。
船江君は「終盤が好きなので、そこに注目して欲しいです」と。
詰め将棋作家としての顔もある船江君らしいですね。

後手の近藤君は、比較的落ち着いた受け答えを見せていて、
「皆さまに熱戦をお届けできるように頑張ります」と、
何とも良いコメントをしていました。

☗先手:船江恒平 五段
☖後手:近藤誠也 四段

7六歩、8四歩、2六歩、3二金、7八金、8五歩。
角換わりの出だしとなりました。

7七角、3四歩、8八銀、7七角成、同銀、4二銀。
3八銀、7二銀、4六歩、6四歩、6八玉、6三銀。
角換わり腰掛け銀へ進みそうです。

3六歩、5二金、3七桂、4一玉、4七銀、3一玉。
5八金、5四銀、5六銀、4四歩、7九玉、7四歩。
6六歩、1四歩、1六歩、9四歩、9六歩、7三桂。

お互いに時間を使うことなく淡々と進んでいます。
焦点はどこか。

2五歩、6五歩、同歩、3三銀、4五歩、同歩。
ここで後手が6五歩を入れたのが工夫で、前例は少ないそうです。
4五歩に同歩の局面は先後同型。

3五歩、8六歩、同銀、4四角、7七角、6六歩。
後手の8六歩に船江君が時間を使っています。
ここでは同歩に継ぎ歩がくる形が多いそうです。

実践は同銀。これには渡辺さんも「珍しい手」と解説していました。
この手に、今度は近藤君が考えています。
ここで対戦成績の話があり、初手合いだそうです。

渡辺さんが近藤君が初出場という話から、
NHK杯は独自の「考慮時間」というシステムが分かりづらいと話していて、
棋士の先輩達も口頭だと説明が難しいようで、
「1、2,3」と読まれたら指せと言っていたとか(笑

時間を使った後手の応手は4四角。
この手を見て、先手が再び考えています。
ここでは7七角と合わせる手を選択。

これに後手が指した6六歩は渡辺さん曰く
「優勢です」と言ってるようなもの。

4五桂、6五桂、3三桂成、同金、3四歩、同金。
ここから先手が攻撃を開始。
後手の応手に先手が時間を使う展開が続きます。

2四歩、同歩、4五歩、7七桂成、同銀、3五角。
4四桂、4三金、2三歩、4六角打、3六歩、5七角成。
「先手に良い攻めがあるか」という展開で、2三歩と垂らした局面。

「2三歩が遅いと局面自体がつらい」と解説されていました。
ここで後手は手が広く「正しく指せれば後手が良いはず」と言われています。

後手の考慮時間が続きます。
着手は4六角打。これは大盤で藤田さんが挙げていた手で、
渡辺さんの解説では芳しくなさそうでした。

船江君は考慮時間を使い切って3六歩を選択。
この手は渡辺さんが「勝負手」と言っていた手で、
実際に指されて「うわあ、斬り合った」と声をあげていました。

6八歩、4六角、5七金、2八角成、3二銀、4二玉。
6八歩は読みの入った上手い受けに見えました。
後手の考慮時間も0分に。

3一角、5一玉、4三銀成、同銀、5三角成、4四金。
3六歩以降は必然の進行といった感じで進んでいます。

同歩、同銀、5二歩、同飛、同馬、同玉。
終盤力に自信のある船江君が「3六歩の時点でどこまで読めていたのか」と
渡辺さんが話していて、この5筋に歩が利くのが決め手のようです。

5四金、4九飛、8八玉、6九角、7九金。
最後は先手の7九金を見て、後手が投了。
89手で船江五段の勝ちとなりました。

一局を通しては後手の近藤君の差し回しが良く、
優勢に進める展開となりましたが、焦点となった局面で、
4六角打が疑問手で、このチャンスを逃さずに3六歩から流れは、
終盤力に自信のある船江君らしい、見事な逆転劇となりました。

感想戦で近藤君は4六角打に替えて、4五銀も考えていたそうで、
幾つか手が検討された中、意外と手が無く、4五銀が正着だったのでは
ないかという結論に。

色々と手がありそうな局面で、選びにくい4五銀しかないのは、
短い持ち時間の中では、難しい選択だったようですね。

大盤では渡辺さんの解説が、いつもながら終始明快で、
とても楽しい日曜の午前となりました。

次回の対局は
『大石直嗣 六段 vs 石井健太郎 四段』
初出場棋士が続きます。来週も楽しみです。

解説は所司和晴七段。
本日の対局者である近藤四段、解説の渡辺竜王の師匠ですね。
弟子にプロ棋士が増える中、どのような話が聞けるでしょうか。

前回の記事にも書きましたが、一回戦の対局は対局者や
内容によって書いたり書かなかったりすると思いますので、
記事が無かったら「ごめんなさい」ということでっ。

【関連記事】
第65回 NHK杯『村山慈明 七段 vs 千田翔太 五段』研究激突!角換わりを制して歴史に名を刻んだのは
【将棋記事も書いちゃうジェイクールの雑記一覧はこちら】
https://www.j-cool.co.jp/blog/?cat=4