木村八段が羽生王位に挑む第55期王位戦が昨日から始まりました。
王位戦は二日制なので、本日が二日目となります。
振り駒の結果は、羽生さんが先手に。
今期負けなし11連勝の勢いでしょうか。
まあ、2分の1の確率なので言い過ぎです。
戦型は相矢倉。先手は6八角の森下システムから
香が上がり、飛車が回り、雀刺しの体勢に。
対する後手は、6四に上げた角を当たりを避けて7三に引き、
端攻めを受けるべく、3三の銀は2四へ。
最近のタイトル戦は開戦が早く、二日制でも
「一日目でどこまで進むんだ」という対局が多かっただけに、
本局はどこか懐かしい、スローペースな進み具合となりました。
一日目の注目手は、後手の9四歩に対して、先手が9六歩と
受けたところから生じた後手の9五歩。
歩の交換から先手はすぐに9七歩と打ったので、後手だけが手持ちに
する形に。
ただ、後手は9五香と上がったため、この香を活かせるか否かが、
この対局の行方を左右するのではないかと思いました。
そして、本日の二日目。
一日目に端歩の交換こそあったものの、封じ手明けも駒がぶつからず、
お互いに間合いをはかる展開に。
羽生さんは何ともらしい柔軟な差し回しで、端攻めを見せて2六に
上げていた銀を3七に引き、2六歩と突いて、飛車を4筋に転回。
形が整ったので「先手から開戦か」と言ったところで、
先に仕掛けたのは後手の木村さん。5五歩と開戦しました。
まあ、符号を書いても局面が分からないとピンとこないですよね。
棋譜を見た人に向けってことで。中継サイトのリンクを貼っておきます。
王位戦中継サイト
http://live.shogi.or.jp/oui/
お互いの読み筋がぶつかり合う中、妙手を出したのは木村さん。
「そのタイミングで、そこに打つのか」の5八歩。
次の一手予想をやったら、全員外れそうな歩の垂らしでした。
その後、先手が玉頭に歩を連打したところで、堂々と2五同歩と
受けたのが、木村さんの自信を思わせる一手で、
応援している側としては「これはいけるのかっ」とドキドキ。
数手進むと大駒交換となり、先手は予定通りの2四歩。
ここで受けるのか攻め合うのか注目でしたが、
差した手は攻め合いの4九飛打ち。
ツイッター解説の飯島七段も言っていましたが、
この手の感触が良く、一気に景色が良くなったように見えました。
気持ちの良い手ですね。
攻め合いに部が無いと見た羽生さんは攻防手を探るも、
後手の6九銀が、また気持ちの良い踏み込みで、
渡辺明二冠を彷彿とさせる一手でした。
羽生さんは悪いながらも流石で、巧みな受けを繰り出しましたが、
木村さんの寄せが見事で、116手で羽生さんの投了となりました。
木村さん勝ちました。先勝です。マジですかー。
後手番で内容も良く、言う事なしですね。
1つ勝てると気持ちが楽になると思うので、ますます次戦以降が
楽しみになりました。いやあ、良い将棋でしたねえ。
一日目に命運を握るのではないかと書いた9五香は、
先手に咎められることもなく、攻めに利いていたのもおみごと。
本局で際立ったのは木村さんの積極性。
本人も対局前のインタビューで「少し積極的に行きたい」と言っていた
通り、9五歩、5五歩、5八歩など積極的に行った手が
結果的に好手となっており、勝利を手繰り寄せたように見えました。
これで羽生さんの連勝は11でストップ。
対する木村さんは8連勝に連勝を伸ばしました。
こうやって書くと、勢いが止まった人と勢いのある人になるので、
対局前とは見え方が全然違ってくるから面白いですよね。
ほとんどの人が「タイトル奪取は難しいんじゃないか」と思いつつも
本局の内容と結果を受けて「これはもしかしたら」と
感じているのではないかと思います。
棋界のジャイアントキリング。期待していますっ。